金融取引は個別性が強いため、こうした声を聴いた際には、希望取引内容や業種・年商・地域などの属性をお聞きしてから「恐らくこうだと思いますが…」と回答させてもらっています。
同時に、以前に比べれば地域金融機関も随分情報を公開するようになったものの、それでもなお、消費者にとっては金融取引が分りにくい水準にあることを思い知らされます。
このため本稿では、金融機関側から見た目線や、現在の金融機関の実情などを解説・紹介することで、金融取引のご理解の一助を目指します。よろしくお付き合いください。
信金・信組は非営利法人
収益物件のオーナーが、不動産への投資や事後管理などのために融資取引を行う地域金融機関には、地方銀行・信用金庫・信用組合があります。
それ以外の業態を含め、金融事業者はいずれも許認可を受けた後に設立・運営されているのですが、「どの法律に則って設立するか」が異なります。
この際の法律を根拠法と呼んでおり、その根拠法や施行令・施行規則などに沿った「つくり」は、各々かなり異なります。
ごく簡単に言えば、信用組合の組合員になる条件が最も厳しい一方で、銀行には取引にまつわる規制らしい規制はありません。
「それじゃ銀行と取引すれば良いだけじゃないか」という声が聞こえてきそうですが、信用金庫や信用組合は、法人形態自体が「(会員・組合員が)お互いに助け合う」という理念に沿ったものです。
株主利益の最大化を活動目的とする銀行とは異なり、非営利法人であるのもそのためで、名称に「株式会社」「一般財団法人」等も付きません。
歴史的には、大正後期や昭和初期に発生した恐慌や、第二次大戦後などの混乱期に、中小企業・小規模事業者が銀行に融資を申し込んでも応じてもらえなかった経緯が認められます。
そうした時期に「銀行が中小企業・小規模事業者を相手にしないのであれば自分達で何とかするしかない」と設立された信用金庫・信用組合も少なくないのです。
実情はライバル関係
そうした理念や背景の一方で、現在の地方銀行・信用金庫・信用組合の日常の営業実態や活動内容はとても似ており、実際のところは競合状態にあります。預金や融資を奪い合う関係となっているのですから、仲が良いはずもありません。
そんな実情が認められることもあり、3業態はおのおので、一緒にされたり間違われたりすることをとても嫌います。
名称を間違われることはもちろん、以下のようなご発言を聞くことも少なくないのですが、これらは双方の心証を漏れなく害すると思ってください。