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「地銀」と「信金」は何がちがう? 不動産投資家のための「地域金融機関」入門/楽待

2023/12/18 不動産投資

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投資家が知っておくべき基本知識を解説

地方銀行と信用金庫、信用組合の特徴や融資への取り組み方

筆者撮影

 

どの金融機関から融資を受けて物件を購入するかは、多くの投資家が頭を悩ます問題だろう。ひとくちに金融機関といっても、メガバンク、地方銀行、信用金庫、信用組合、ノンバンクなど、その種類は多岐に渡る。

 

金融機関ごとに融資対象となる物件や金利などの条件が異なるが、そもそも金融機関の種類によってどんなちがいがあるのだろうか。

 

信金中央金庫に約30年在籍し、全国の信用金庫や銀行に出向・勤務した経験を持つ佐々木城夛(ささき・じょうた)氏が、地方銀行と信用金庫、信用組合の特徴や融資への取り組み方などについて、投資家が知っておくべき基本知識を解説していく。

 

 

地銀・信金・信組は何がちがう?

 

初めまして、佐々木城夛と申します。

 

筆者は大学卒業後、信用金庫業界の中央金融機関に入庫し、30年ほど勤めました。一般の方には馴染みが薄いと思いますが、信用金庫を後方から支援しているところです。

 

例えば、信用金庫の預金と融資の金額差を預かったり貸したりする調整、信用金庫をまたいだ共通商品・サービスの開発や提供、万一に備えた信用金庫に対する信用の補完などを行っているところです。

 

在籍中には、不動産業を含む融資業務、トレーディングなどの証券業務、銀行の新規設立対応、市場調査・分析業務などを経験したのち、後半は主に信用金庫経営を支援する業務に携わっていました。

 

北海道から島根・広島くらいまでの地域の信用金庫に、職員や役員として半年から2年くらいの出向を何回か行う中で、たまに本体に戻って支店長やアナリストなどをさせてもらっていたのです。

 

退職後はリスク管理などの金融業務の外注請負先を生業とし、併せて分析記事の出稿などのメディア関係業務も請け負いつつ、地域金融機関の非常勤職員と役員をやらせてもらっています。

 

そうした中、不動産関係を含む様々な業種の経営者らから時折、問合せや相談を受けることがあります。例えば、以下のようなものです。

 

 

・そろそろ信用金庫や信用組合と取引したいんだけど、融資だと、どっちの審査の方が通りやすいの?

・やっぱりいきなり銀行に融資を申し込んでも玉砕しそうだから、「信用組合から」が現実的なの?

 

 

金融取引は個別性が強いため、こうした声を聴いた際には、希望取引内容や業種・年商・地域などの属性をお聞きしてから「恐らくこうだと思いますが…」と回答させてもらっています。

 

同時に、以前に比べれば地域金融機関も随分情報を公開するようになったものの、それでもなお、消費者にとっては金融取引が分りにくい水準にあることを思い知らされます。

 

このため本稿では、金融機関側から見た目線や、現在の金融機関の実情などを解説・紹介することで、金融取引のご理解の一助を目指します。よろしくお付き合いください。

 

 

信金・信組は非営利法人

 

収益物件のオーナーが、不動産への投資や事後管理などのために融資取引を行う地域金融機関には、地方銀行・信用金庫・信用組合があります。

 

それ以外の業態を含め、金融事業者はいずれも許認可を受けた後に設立・運営されているのですが、「どの法律に則って設立するか」が異なります。

 

この際の法律を根拠法と呼んでおり、その根拠法や施行令・施行規則などに沿った「つくり」は、各々かなり異なります。

 

 

ごく簡単に言えば、信用組合の組合員になる条件が最も厳しい一方で、銀行には取引にまつわる規制らしい規制はありません。

 

「それじゃ銀行と取引すれば良いだけじゃないか」という声が聞こえてきそうですが、信用金庫や信用組合は、法人形態自体が「(会員・組合員が)お互いに助け合う」という理念に沿ったものです。

 

株主利益の最大化を活動目的とする銀行とは異なり、非営利法人であるのもそのためで、名称に「株式会社」「一般財団法人」等も付きません。

 

歴史的には、大正後期や昭和初期に発生した恐慌や、第二次大戦後などの混乱期に、中小企業・小規模事業者が銀行に融資を申し込んでも応じてもらえなかった経緯が認められます。

 

そうした時期に「銀行が中小企業・小規模事業者を相手にしないのであれば自分達で何とかするしかない」と設立された信用金庫・信用組合も少なくないのです。

 

 

実情はライバル関係

 

そうした理念や背景の一方で、現在の地方銀行・信用金庫・信用組合の日常の営業実態や活動内容はとても似ており、実際のところは競合状態にあります。預金や融資を奪い合う関係となっているのですから、仲が良いはずもありません。

 

そんな実情が認められることもあり、3業態はおのおので、一緒にされたり間違われたりすることをとても嫌います。

 

名称を間違われることはもちろん、以下のようなご発言を聞くことも少なくないのですが、これらは双方の心証を漏れなく害すると思ってください。

 

 

金融機関に対する誤った認識


・「規模の小さな銀行=信用金庫」なんだよね?
・信金と信組は一緒なんでしょ?

 

面倒くさいとお思いでしょうが、うまく付き合っていただければ幸いです。3業態の規模や商品提供実態を例えれば、以下のようなものになるでしょう。

 

 

地方銀行・信用金庫・信用組合とは?

・地方銀行≒大型ショッピングモールの鮮魚売場
・信用金庫≒中堅食品スーパーの鮮魚コーナー
・信用組合≒個人経営の鮮魚店

 

いずれも「魚や貝などを売る店」であることは変わりませんが、モールなどでは複数の専門店などが売場を形成していたり、多種多様な冷凍品や半製品などが揃っていたりします。

 

その一方で、個人経営の鮮魚店では、魚や貝の種類や量はかならずしも多くありませんが、地元の港などに顔が利くため、小ロットの珍しい魚などを並べていたりします。

 

また、呼び込みが上手な店員や、話し好きの店主などが強固なファンを抱えていたりすることもあります。3業態の違いも、そういったものに近いように感じます。

 

金融商品の価格についても、スケールメリットを働かせられる大手の方が安くできることは、鮮魚と変わりません。もちろん一概には言えませんが、事業資金の融資金利も「地方銀行<信用金庫<信用組合」であることが少なくありません。

 

PHOTO:ISO8000 / PIXTA

 

その一方で、大量のロットを仕入れて捌く必要のある大手では、取引先を選別する際にも例外を許容する余地が狭くなりがちです。

 

例えば、仕入先では均一の品質を多量で納入できるところを優先することとなり、販売先でも、大手など大量に購入してくれる先への条件をディスカウントする意向が働きます。金融取引でも、こうした意向が働くことが珍しくないのです。

 

 

職員の気質も異なる?

 

筆者は仕事柄、銀行・信用金庫・信用組合の方々と接する機会が多いのですが、気質のようなものもかなり異なります。

 

非常に大くくりな分類では、地方銀行の行員は、新卒時に都道府県庁などとの就職を迷いながら最終的に銀行に行きついたような人が多く、UIJターンも少なくありません。かつては、新聞社や放送局などの入社試験も受験している人が多かったようです。

 

信用金庫の職員は、市区町村の役所・役場などとの就職を迷いながら、最終的に信用金庫に行き着いた方のほか、教員や警察官などの専門職の採用試験を受けつつ受験する人も多いようです。営業地域内の長男・長女などが多いのも特徴です。

 

信用組合も信用金庫と似ていますが、信用金庫にはない「業域」や「職域」の形態があるため、その業種や職場に親族などが居る人が珍しくないようです。

 

 

不動産投資家に馴染みのある、地方銀行と信用金庫、信用組合のちがいについて、解説してきました。

 

収益物件への融資申込み、あるいはそれに先立った事業者名義の口座開設などにあたっては、これらを踏まえた諸準備やもの言いなどが有効に作用することがあります。

 

次回以降に順次詳しく説明させていただきます。なにとぞよろしくお読みください。

 

(佐々木城夛)

 

 

 

 

 

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